生活防衛資金はいくら必要?正社員・派遣社員・アルバイト・個人事業主の公的制度から考える金額の目安

資産形成

「生活防衛資金は、何か月分あればいいの?」

3か月分、6か月分、1年分など、さまざまな目安があります。

しかし、必要な生活防衛資金は、すべての人に同じではありません。

病気やケガで働けなくなったときや、仕事を失ったときに利用できる公的制度は、働き方や加入している社会保険によって異なるからです。

この記事では、正社員・派遣社員・アルバイト・個人事業主を例に、公的制度を確認しながら、生活防衛資金をどのように考えればよいのかを整理します。


生活防衛資金は何か月分必要?

生活防衛資金について調べると、「3か月分」「6か月分」「1年分」など、さまざまな目安が出てきます。

では、どの数字を目安にすればよいのでしょうか。

私は、最初から何か月分と決めるのではなく、自分が利用できる公的制度を確認してから考えることが大切だと考えています。

例えば、病気やケガで働けなくなった場合には、健康保険の傷病手当金を利用できることがあります。

仕事を失った場合には、雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付を利用できる場合があります。

ただし、これらの制度は誰でも利用できるわけではありません。

そこで、まずは自分がどのような公的制度を利用できるのかを確認してみます。


まず確認したい2つの「もしも」

生活防衛資金を考えるとき、まずは次の2つを考えてみます。

もしもの状況主に確認する制度
病気・ケガで働けなくなった健康保険の傷病手当金
仕事を失った雇用保険の基本手当

重要なのは、公的給付があるかどうかだけではありません。

確認したいのは、

  • 利用できるのか
  • いつから受け取れるのか
  • いくら受け取れるのか
  • いつまで受け取れるのか

という点です。

これを確認することで、「収入がなくなったときに、自分のお金でどこまで生活を支える必要があるのか」が見えてきます。


正社員の場合

正社員の場合は、健康保険や雇用保険などの公的制度に加入しているケースが多くあります。

そのため、生活防衛資金を考えるときには、まず利用できる公的給付を確認します。

病気やケガで働けなくなった場合

健康保険に加入していて、業務外の病気やケガによって仕事を休み、一定の条件を満たした場合には、傷病手当金を利用できます。

傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んだときの収入を補う制度です。

項目傷病手当金
主な対象健康保険の被保険者
支給開始連続する3日間の待期後、4日目以降
支給額原則、標準報酬月額の平均額をもとに計算
支給期間支給開始日から通算1年6か月

※実際の支給には一定の条件があります。

傷病手当金は給与と同じ金額がそのまま支給されるわけではありません。

そのため、働けなくなった場合には、

普段の生活費 − 傷病手当金

の差額を自分のお金で補う必要があります。


仕事を失った場合

雇用保険に加入していて、一定の条件を満たしていれば、基本手当を利用できる場合があります。

基本手当の金額や給付日数は、離職前の賃金や年齢、雇用保険の加入期間、離職理由などによって決まります。

確認すること内容
受給資格雇用保険の加入期間などを確認
金額離職前の賃金などをもとに決定
支給開始離職理由などによって異なる
給付日数年齢・加入期間・離職理由などによって異なる

そのため、失業した場合も、

普段の生活費 − 基本手当

という考え方で、自分で準備する必要がある金額を考えることができます。


正社員は「6か月」を一つの例にする

正社員の場合、生活防衛資金を考える最初の目安として、生活費6か月分を一つの例にすることができます。

例えば、毎月の生活費が15万円なら、

15万円 × 6か月 = 90万円

です。

ただし、これは「正社員なら6か月分あれば十分」という意味ではありません。

傷病手当金や基本手当をどの程度利用できるのか、自分の生活費はいくらなのかによって、必要な金額は変わります。

6か月を出発点として、公的給付を考慮しながら調整していきます。


派遣・アルバイトの場合

派遣社員やアルバイトの場合は、「派遣だから」「アルバイトだから」という理由だけで、必要な生活防衛資金を決めることはできません。

重要なのは、健康保険や雇用保険に加入しているかどうかです。

同じ派遣社員やアルバイトでも、勤務時間などの条件によって加入している制度が異なる場合があります。

そのため、まずは自分の加入状況を確認します。

健康保険を確認する

病気やケガで働けなくなった場合に確認したいのが、傷病手当金です。

健康保険に加入していて、支給条件を満たしていれば、派遣社員やアルバイトでも傷病手当金を利用できる場合があります。

一方、国民健康保険に加入している場合は、原則として健康保険の傷病手当金はありません。

そのため、

自分がどの健康保険に加入しているのか

を確認することが重要です。


雇用保険を確認する

仕事を失った場合は、雇用保険の基本手当を確認します。

派遣社員やアルバイトでも、一定の条件を満たしていれば雇用保険に加入します。

確認項目確認すること
雇用保険加入しているか
加入期間基本手当の受給資格を満たしているか
離職理由会社都合・契約満了・雇止め・自己都合など
基本手当いくら・いつから・何日間受け取れるか

特に派遣社員の場合は、派遣先での仕事が終了したことと、派遣元との雇用関係が終了したことは同じではありません。

そのため、派遣先との契約が終了しただけで、直ちに失業給付の対象になるとは限りません。

実際に離職した場合には、派遣元との雇用契約や離職理由を確認する必要があります。


契約満了や雇止めの場合はどうなる?

雇用保険では、離職理由によって基本手当の扱いが変わります。

例えば、期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合でも、その状況によっては特定理由離職者などに該当することがあります。

また、会社の倒産や解雇などによる離職では、特定受給資格者に該当する場合があります。

離職の例確認すること
会社の倒産・解雇など特定受給資格者に該当するか
契約満了・雇止め離職理由による扱い
やむを得ない理由による離職特定理由離職者などに該当するか
一般的な自己都合退職給付制限などを確認

離職理由によって受給資格や給付日数などが変わるため、単純に「仕事がなくなったら失業給付がもらえる」と考えないことが大切です。


派遣・アルバイトの生活防衛資金を考える

派遣社員やアルバイトの場合は、まず次の順番で確認します。

STEP確認すること
1健康保険に加入しているか
2傷病手当金を利用できるか
3雇用保険に加入しているか
4基本手当の受給資格があるか
5離職理由によって給付がどう変わるか

公的制度を利用できる場合は、その分を考慮して必要な生活防衛資金を決めます。

反対に、公的給付を利用できない場合は、その分を自分のお金で備える必要があります。


個人事業主の場合

個人事業主は、会社などに雇用されている人とは公的保障の仕組みが異なります。

特に、病気やケガで仕事ができなくなった場合や、事業収入がなくなった場合に、会社員のような所得保障を利用できないケースが多い点に注意が必要です。

病気やケガで働けなくなった場合

個人事業主が加入する国民健康保険には、会社員が加入する健康保険の傷病手当金と同じ仕組みが原則としてありません。

ただし、自治体や国民健康保険組合によって独自の給付が設けられている場合があります。

そのため、自分が加入している制度を確認する必要があります。

仕事や事業収入がなくなった場合

個人事業主には、雇用されている人を対象とする雇用保険の基本手当は原則としてありません。

そのため、

  • 病気やケガで働けなくなった場合
  • 事業収入がなくなった場合

のどちらについても、自分で準備しておく必要があるお金が大きくなりやすいと考えられます。

そのため、個人事業主は、正社員などの雇用されている人よりも長い期間の生活費を準備することを検討する必要があります。

ただし、必要な期間は事業の安定性や収入の状況によって変わります。


公的給付を考慮して生活防衛資金を計算する

ここまで確認したら、実際に自分に必要な金額を考えてみます。

基本となる考え方は、

生活費 − 公的給付 = 自分で準備する必要がある金額

です。

例えば、毎月の生活費が15万円で、公的給付によって月10万円を受け取れるとします。

項目金額
毎月の生活費15万円
公的給付10万円
自分で補う金額5万円

この場合、毎月5万円を自分のお金で補う必要があります。

さらに、収入がなくなる期間を考えます。

例えば6か月間について考えるなら、

5万円 × 6か月 = 30万円

となります。

ただし、実際には公的給付がすぐに支給されるとは限りません。

そのため、

生活費 × 必要な期間 − 公的給付

という考え方を基本として、支給開始までの期間なども含めて考える必要があります。


自分に必要な「何か月分」を決める

ここまで読んでも、「結局何か月分必要なの?」と思うかもしれません。

しかし、ここで一律の答えを決める必要はありません。

重要なのは、自分が何か月あれば安心して生活できるのかを考えることです。

考える順番をまとめると、次のようになります。

順番考えること
①毎月の生活費はいくらか
②病気・ケガのときに利用できる制度はあるか
③失業したときに利用できる制度はあるか
④公的給付はいくら受け取れるか
⑤公的給付はいつから受け取れるか
⑥公的給付はいつまで受け取れるか
⑦公的給付で足りない金額はいくらか
⑧その金額を何か月分準備するか

正社員であれば、6か月分を一つの出発点として考えることができます。

一方で、派遣・アルバイトの場合は、加入している制度によって必要な期間を調整します。

個人事業主の場合は、公的な所得保障が少ないため、より長い期間を検討します。

つまり、6か月という数字そのものよりも、自分の状況に合わせて必要な期間を決めることが大切です。


生活防衛資金とは別に準備しておくお金

生活防衛資金とは別に、あらかじめ支出することが分かっているお金もあります。

例えば、

支出例
税金自動車税など
車関連車検・整備費用
保険年払いの保険料など
引っ越し引っ越し費用・初期費用
家電冷蔵庫・洗濯機などの買い替え

こうした支出は、収入がなくなるというリスクとは性質が異なります。

そのため、生活防衛資金とは分けて準備しておくと、必要な金額を把握しやすくなります。


そのほかの公的制度も知っておく

この記事では、生活防衛資金を考えるうえで特に影響の大きい「病気・ケガ」と「失業」を中心に説明しました。

実際には、これ以外にも公的な制度があります。

例えば、

  • 仕事中・通勤中の病気やケガ → 労災保険
  • 医療費が高額になった → 高額療養費
  • 障害が残った → 障害年金
  • 家族に万一のことがあった → 遺族年金

などです。

すべての制度を詳しく覚える必要はありません。

ただ、自分に関係する可能性のある制度があることを知っておくだけでも、いざというときに調べやすくなります。


まとめ

生活防衛資金は、「○か月分あれば正解」というものではありません。

まずは、自分の働き方と加入している公的制度を確認します。

働き方最初に確認すること
正社員傷病手当金・基本手当
派遣・アルバイト健康保険・雇用保険の加入状況
個人事業主利用できる所得保障がどこまであるか

そして、

生活費 × 必要な期間 − 公的給付

という考え方で、自分で準備する必要がある金額を考えます。

正社員の場合は、6か月分を一つの例として考えることもできます。

しかし、6か月はあくまで出発点です。

公的給付を利用できる人は、その内容を考慮して必要な期間を調整できます。

反対に、公的給付を利用できない人は、より長い期間を準備することを検討する必要があります。

生活防衛資金は、単純に「○か月分貯める」のではなく、

「収入がなくなったとき、自分のお金でどこまで生活を支える必要があるのか」

から逆算して考えることが大切です。